bunnah
創作曲のできるまで
「ブンナ」を創る

第11回 圭さんに聞く3-続“幸福な”つぐみ

けいさん? 根岸 圭【ねぎし けい】さん
1999年東京芸術大学作曲科卒業・千葉県在住
なのですけど、でも
これって、ほんとうは“デメリット”だったんじゃないかしら…

▼“打ち合わせ”だけでは意思疎通はたいへん?
練習にひんぱんに顔を出せるというのが
やはり理想的だと思います。
でないと、歌う人たちは何が苦手で、
曲のどんなところを〈難しい〉と言っているのか、
よくわからないからです。
▼担当者や指揮者がもたらす情報だけでは、遠距離の壁は乗り越えられない
引き受けた当初は、なんとかなるだろうと思ってましたが、
千葉と静岡の距離は無視できない障壁でした。
▼今後、作曲を引き受けるとしたら地元に限定したいですか?
“遠距離”という条件の仕事は、引き受けるのに
二の足を踏むかもしれませんね。
私の友人は、作曲を頼まれた団体に入りびたり、
ついには舞台監督までしてしまいました。
地元で密着できたからこそ出来たことですね。
▼TERRA夏の旅行ですごした時間が“地元密着”効果を発揮したわけですね。
でも、「つぐみのうた」からは、そろそろッと自分のしたいことを
始めてるんですよ。
場面転換ごとに転調してるし、基本的じゃない和音を使ってるし、
音を伸ばしているうちに、だんだん無調に…という具合。
▼無調で作りたかったですか?
題材にもよりますし、
それに、こう書いて欲しいと言われればそのように書けますが
『ブンナ』は無調の曲というイメージでした
とくにドロドロしたところ。
▼最初の曲「水ぬるむ五月」をやさしい歌にとのリクエストには驚いた?
あれは、やさしい詩だから、やさしい曲でよいと思います。
ただ、全体を通して古典的な・合唱曲らしい・馴染みの音階が希望なら
芸大生には依頼しないほうがいいかも。
▼藝大作曲科は“無調の牙城”?
かの三枝成章さんも、在学中は無調の作曲に励んでます。
▼TERRA的な作曲家の条件は地元在住の非=芸大出身者だったのか…
理想的な条件といえば、たぶん、そうなると思います。

▲ふ〜む…でもね、
「つぐみのうた」や、それに続く曲たちの出来映えをみると、
この二つの条件とは別に、大切な条件があると云えそうですよ。

シベリアから飛んできて鳶に捕まった哀れなツグミの歌が
伊豆・西海岸の夏を共にすごした時間のおかげで、
ハードルを苦もなく飛び越えた幸福な曲だったことに
ちがいはないけれど。




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