K案

ぼくら、かえるは、みんななにかの生まれかわりなんだ。
それがよくわかった。ぼくは鼠さんの生まれかわりだよ。
自分は自分だけと思ってたけど、自分のいのちというもの
は、だれかのおかげで生きてこれたんだ……地上にとんで
いる小さな虫や羽虫は、みな鼠やへびや牛がえるの生まれ
かわり。それをくって生きるぼくらは、敵だと思っている
へびや鼠をくっていることになるんだ。ぼくらのいのちは、
大ぜいのいのちの一つだ……だから、だれでも尊いんだ。
つらくても、かなしくても、生きて、大ぜいのいのちの
かけはしになるんだ……



H案

【独白】 椎の木のてっぺんからおりてきたぼくは
むかしのように得意にはなれず
木の上の冒険をじまんしたい気持ちもなくて
無事にもどれて、ただただうれしいだけです。
あそこには、もう登りたくないし、
空を飛びたいとも思わない。

生きるものは、いずれ死んで土になってしまう。
でも、また生まれかわって土から出てくる。
そう聞いたことがあります。

やがて、ぼくも、なにかに生まれかわって生きるのだと思います。
かえるも、へびも、百舌も、雀も、みな同じ仲間で、
死んでも、なにかに生まれかわって生きてゆくのでしょう。
へびは鳶のえさになったから鳶になりました。
百舌も、やっぱり鳶になったにちがいありません。
ぼくが冬を生き延びることができたのは
死んだ鼠さんから出た羽虫を、おなかいっぱい食べたから。
とすると…

       【「空耳」挿入】あの鼠さんは、ブンナになった

【ここから調子を変えて語りかける】
そう、ぼくは鼠さんの生まれかわり。
みんな、なにかの生まれかわりなんだ。
ぼくらのいのちは、おおぜいのいのちのひとつ。
つらくても、かなしくても、生きて
おおぜいのいのちの、かけはしになるんだ。

おーい、みんな、がんばって生きよう、きょう一日を。
きのうのかなしみなんかわすれて、声をあわせてうたおうよ。
生きられる今日のよろこびを!