第1曲案案

第1曲案案

■A

鳥のように、空を飛べたら、広い世界が見えるだろうな。
鳥のように、自由に空を飛べたら楽しいだろうな。
木の上に登ると、石も橋もおもちゃに見えます。お寺の屋根も
町に向かう白い真直ぐな道を走る自動車も。
「ブンナよ。おまえさんは、いい子だ。私達はおまえさんのおかげで、沼で1日中安
心して暮らすことが出きる。……おまえさんはほんとうに……木登りの上手ないい子
だ」
そうだ!この椎の木のテッペンまで登ろう。
もっと遠い世界を見よう、木のテッペンまで行って、
鳥のように広い世界を見よう、自由に空を飛ぶように楽しいだろう。
登ろう下を見ずに、ああなんと高い空だろう。
青緑の空、ちぎれ飛ぶ雲、かすむ高層ビル。
すばらしいながめだ。
「頂上に不思議な広い平地がありました。
ブンナは自慢するために、この広場に穴を掘って一晩過ごすことにしました。
翌朝ドサッと音がして眼を覚ましたブンナは、鳶がきたのを直感しました。
餌になる怪我をしたすずめと百舌そして鼠をつれてやってきたのでした。
なんとここは、鳶のえさ置き場だったのです。」

■B

こんなところに土が
まるでぼくのための別荘のようだ
ぼくらは土の上にばかりいたから、知らないことが多いんだ
僕ははじめてあの頂上へいってみてきた
世の中にはすばらしいところはあるもんだ
へびも鼠もこない別天地のような土があるんだ
あの木の上の丸い広場はぼくだけの世界だ
そうだ、あの土の上で一晩寝てみよう
自分の勇気をためしてみたい

■C

 僕の名前は『ブンナ!』トノサマガエルなんだ。
 池に居る他の土ガエルよずっと高く飛び、木にも登れるから、
 僕はみんなからうらやましがられたり、
 感謝されているんだ。怖いものなんてありゃしない。
 だから、この大きな大きな木に登って、
 こことは違う世界を見に行くんだ!
 どんなにすばらしい世界なんだろう!

■D

高い高い秋の空
渡りの群が飛んでゆく
お寺の屋根の向こうに、開ける田圃
遠い都へつづく白い一本の道
町外れの小高い鎮守の森
沼の岸から聞こえるカエルたちのうた
さあ、うたおうよあそぼうよ
鎮守の森の、のどかな一日 高い高い秋の空

ブンナ語り(暖かい小春日和のある日、とうとう僕は決心したんだ・・)

■E

あの椎の木の一番てっぺんまでのぼったら
何があるのかなあ
ぼくの知らないすてきなこと
不思議なこと
広い世界
見たこともない世界
わくわくする場所
さあ行こう、あの木のてっぺんまで

あの椎の木の一番てっぺんまでのぼったら
何があるのかなあ
ぼくの住んでる小さな沼
広がる田んぼ
知らない町
その向こうに青い空
ちぎれ飛ぶ雲
さあ行こう、あの木のてっぺんまで

ブンナ「さあ、これから頂上までのぼる。あの椎の木のてっぺんはどんな所
か、もっと詳しくみんなに話してやるよ。」

だいじょうぶかい、調子はいいかい
無理をしちゃいけないよ
ブンナ、おりてこい、無理をせずにおりてこい

ブンナ「ぼくはのぼった。無心にのぼった。あまり下を見ないでね。やがてみ
んなの声も聞こえなくなった。」

■F

椎の木のてっぺんからは、何が見えるのだろう。

のぼりはじめたブンナから、地上の仲間はどこにいるのか、もう見えない。
沼は小さく、石の橋もおもちゃのよう。

ああ、なんと高い空なのだろう。
なんと大きな寺の屋根。かわらはまるで碁盤の目のよう。
むこうにひらけるたんぼ。
坂道に日があたり
遠い都につながる白い一本道
かなたに高層ビル、大小さまざまな建物

海のような青みどりのそら、ちぎれとぶ雲

そして椎の木のてっぺんの広い平地と土

自分だけの秘密の平和な島
自分のために造られた別荘
陽あたりのいい、とてもいい所。

年寄かえるは、高い木の上には鳶が来るという言うけれど
鳶が来たらかくれるさ、土の中にもぐればだいじょうぶさ、
土はふかいのだから。

ぼくらは知らないことが多いんだ。
世の中にはすばらしいところがあるものだ。
へびもねずみもこない別天地のような土があるんだ。

自分だけの世界だ。