以下は、 第2曲「椎の木のてっぺん」中間部の歌詞採用箇所を、
原作テキストの引用の中に赤色で示し、
前後関係を明らかにしようとしたものです。
(原作テキストは、水上勉『ブンナよ、木からおりてこい』,新潮文庫,1981年.による。)

TERRA創作曲担当者たちのテキスト選択眼、想いのありか等々を御想像ください。

百舌 原作47-48ページ
あけがた、寝起きにおれはやられたんだ
のんきな気持ちで、電線にとまっていたら、
急にうしろからやつがやってきて…
気づいて逃げようとしたら、
鳶のヤツ、もうおれのうしろ首へ
くちばしをつきさしていたよ。
ぐさッとひとつきされておれは地面へ落ちた。
くちばしを折ったもんだから、じっと痛みをこらえていたら、
おれをつまみあげて、空へあがりやがった。
おれはそこでまた地面へ落とされたんだ。
鳶のやつは失神したおれを、
こんどはゆっくりつかんで、ここへもってきた…
あの時、電線にとまって、ねぼけてさえいなければ、
こんな目にはあわなかったんだ。

雀 原作48-49ページ
「いつもなら、鳶のくるのを警戒していたんだけど、
あんまりいいお天気で、
がらにもなく鬼がわらの上へのぼったんですよ。」
「百舌さんならいいが、雀の分際で、あんな高いところへとまったもんだから、
遠くにいた鳶に見つかったんです。
大風が吹いてきて、せなかが寒くなったと思ったら、
わたしのからだは宙にういていた。
羽のつけねがまがっていたい…ないているうちに、
ここにつれてこられたんです。
わたしはまだ生きていたい、
巣へ帰って、この冬を精いっぱい生きて
春がきたらヒナをかえしたい

鼠 原作86ページ
おれは、水をのんでたんだ。もちをくいすぎたもんでね…
みぞに顔をつっこんで、 ゴクゴクやっているところを、
鳶のヤツが上空からみていて、さっとおりてきやがった。

おれの頭と背中は穴だらけだ。」

蛇 原作120-121ページ→作曲段階で割愛
おれはばかだった。
どうして、あんなヤボなかっこうで、
とり小舎を出て屋根にのぼったのかね。
空の敵にまったく無警戒だった。

欲をかいて穴を出たのがいけなかったんだ なやっぱり。
おとなしく、子供らといっしょにねむっておれば、
こんなめにあわなかったんだ。しかし、
そうはいってもあの卵はほしかったからなあ