bunnah
創作曲のできるまで
「ブンナ」を創る

第20回 椎の木のてっぺん・その2

鳶が次に椎の木のてっぺんに来るのは
エサ候補たちを正にエサとして巣へ運ぶときです。

そして、ついに鳶が戻ってきたとき
あるものは悪態をつき、
あるものは自分を後回しにしてくれと哀願するのです。

登場物の役を振り当てられた合唱団員が叫び
騒然となる場面を私たちは想定しました。
パニックに陥った様を表すのに、
唐突に鳴り物を鳴らしてしまうことも思いつきました。
しかし…

未知数に賭けるのは不安なんですよねー。作曲家としてコントロールできないから。TERRAの皆さんの演技力が、やはり心配でした。[k]

で、届いたスコアに登場物たちのパニックはなく、
代わりに、別のテキストによる歌詞がありました。
(出典:水上勉『ブンナよ、木からおりてこい』,新潮文庫,1981)

この世は、強いヤツが弱いヤツを喰って生きてる。…それが鉄則だ。
そのほかのことはみないいかげんなごまかしだ。(p.71)

弱いってことはわるいことではないよね。かなしいことにちがいないけど、
弱いことはわるいことではないよね。(p.75)

生きとし生けるもの、すべて太陽の下にあって、平等に生きている。
…賢い者は愚かな者を蹴落とし、
強い者は弱い者をいじめて生きている。(p.212)

まず最初は百舌の「人生哲学」、次はブンナを百舌に売ろうとした雀の
ブンナに対する言い訳、そして
原作者の「母たちへの一文 あとがきにかえて」から。
これらテキストが重層的に扱われます。

わたし的には、これらのテキストが『ブンナ〜』のエッセンス。その意味で第2曲だけあればよい、とさえ云えます。[k]

そうだったんだ、kさんたら…だから、第2曲の冒頭部分も
あんな凝りに凝った曲として作ったのですね。
そもそも渡したシナリオにはなかったのに
というばかりでなく
ゲンダイオンガクの牙城=芸大作曲科の本領発揮!!
だったので
TERRAのみんなは面食らってしまいました。

次回は、その第2曲冒頭部分について。         




今日の 「名前はまだない」猫の名前

つひに“豪華賞品”決定!! 詳細は応募用紙 参照。



連載一覧へ